著者:水島広子
出版社:創元社
対人関係療法ってなにと思ったので手に取ってみました。
エクスポージャー法やEMDRとは異なり、トラウマ的な出来事に
直接向き合うのではなく、身近な人との関係に焦点を当てて治療する
ことで、その人が抱える問題を解消しようというものです。
具体的には「悲哀」「役割をめぐる不一致」「役割の変化」「対人関係
の欠如」の4つのいずれかを選んで治療するそうです。
この中で印象に残ったのは「役割の変化」についてです。
この場合の役割とは身体の変化(加齢や病気)や社会的な変化
(転職や結婚など)も含みます。
つまり社会における立場の変化や身近な人との関係の変化ということです。
対人関係療法はこれらの変化に適応できない場合に健康問題(たとえば
うつ病)が発生すると考えていきます。
健康的な状況であっても、変化に対して「まあなんとかなるだろう」という感覚が
持てなくなってしまいます、
それでも、多少の変化であれば趣味に没頭したり、友人に愚痴ったりして
その感覚を取り戻すことが出来ます。
ところが、「まあなんとかなるだろう」という感覚を持てなくなってしまうくらいに
激しい変化がトラウマです。
本書では「ふつうに人生に歩いていたところ、突然足下が地割れして
たたき落とされた」と表現されています。
突然暗闇の中に突き落とされて、自分になにが起きているのか、何を
したらいいのか分からなくなってしまうと思います。
トラウマ体験をしてPTSDになった人はその時点で時が止まってしまっていると
考えられるそうです。
役割の変化が大きなトラウマの一つだとすると、それから脱するために周囲の人
の協力が不可欠ですが、その変化を境に身近な人の支えがなくなり、
孤独な体験をする場合や、変化によって発生する感情が強すぎて
コントロールできないと感じることがあります。
自分の感情のコントロールが出来ないと言うことは「自分への信頼感」を失うことにつながります。
今まで出来ていたことが出来なくなってしまうと自分が大丈夫だと思えなくなるからです。
それに対してトラウマを役割の変化として取り扱うということは、例えば
親しい人にトラウマについて理解してもらったり、トラウマ体験を話しを
したりすることで安心感を得たり、それ以外の人間関係を立て直したり
することにつながります。
と、ここまで役割の変化について書いてきましたが、私にとってトラウマ
を役割の変化をみなすということ自体が初めての考え方でした。
そうか、父親に灰皿を投げられた時に私と父親の関係は変わってしまった
のかと納得することができました。
それ以前にも色々とあったわけですが、決定打としてはそれでしょう。
そして、その後カウンセリングを受けるまで誰にも言えずに十年くらい
つらいを思いをしてきました。(孤独感)
EMDRを受けることによってつらい気持ちが変わりませんが、少なくとも
ブログに書いたり、友人に笑って話せるようになりました。
そういう意味では少しだけ前進しているかなと思います。
最後にトラウマから回復することについて、本書で述べられていることを少しだけ引用します。
「トラウマを「傷」としてとらえてしまうと、「一生続く回復のプロセス」
は『一生消えない傷』というネガティブな雰囲気になってしまいますが、
トラウマを『適応していくべき役割の変化』として見て、そのプロセスを
『一度離断してしまった人生の道のりをまた見つけてつないでいくこと』と
考えれば『毎日つながりが増えていく』という見方をすることもできます。」(p.175)
先日書いた「その後の不自由」でも書いてありましたが、トラウマからの
回復って嫌な気持ちは消えないけれど、その影響を小さく小さくしていく
ことなんだろうなと思います。
私の抱くトラウマからの回復って過去の嫌なことを思い出しても苦痛を
感じないというものなので、しばらく新しい方の考え方を身につけて
いければいいかなと思います。
だってどのみち思い出しても苦痛を感じないって無理そうな感じがしますもん。
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