2017年09月17日

親への手紙が採用された

http://risuegg.com/article/451444101.html?1505640554
で書いた親への手紙。

日本一醜い手紙 親への手紙プロジェクトに採用されたそうだ。
http://dze.ro/archives/13661
どういう形かは分からないけど掲載されるらしい。

自分の書いた文章が本になるなんてびっくりだ。
posted by はぴたん at 18:36| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月09日

リスとカット

初めてのリストカットはT字カミソリだった。
二の腕のTシャツでぎりぎり隠れるギザギザの痕は今も残っている。
そもそもの自傷行為の始めは自分の怪我のかさぶたをはがすことだった。

治ったところを執拗に剥がすから私の膝小僧はいつもジュクジュクしていた。
そのうちI字型のカミソリの存在を知った。
こっそりドラッグストアでカミソリを買って、次は前腕を切った。
最初は浅かった。だからすぐにかさぶたとなり消えた。
だけれどそれがどんどんエスカレートしていって、毎日理由を作っては
自分の腕を切るようになるのはあっという間だった。

深夜、自室の椅子に深く腰掛けて、机に右腕を軽く乗せる。
左手にカミソリを持って、切りたい場所に軽く置く。
ふっと息を吐いて、そのままカミソリを引く。
一瞬、皮下脂肪が見えて、そしてすぐ血があふれてでくる。
痛い。
でも慌てず騒がずティッシュで患部を押さえて、血が止まるまでぼーっとする。
そのうちだんだん傷口がズキズキしてくる。
そうなったらリストカットの時間は終わりだ。
多い日には何本か切ることもあるけれど、大概は1回につき1本だけ。

そうやって自分の右腕を切り刻んで、31本目になったころ、あることが
きっかけで友人と契約を結んだ。
「リストカットをしない。次にやったら友人としての付き合いを止める」
私はその友人のことが大事だったので、リストカットはしたかったけれど
我慢することにした。それは今も続いている。

リストカットは不便だ。
夏でも半袖を着られない、着たとしても周りの目が気になる。
1本2本の切り傷なら猫にひっかかれたのかなで済むだろうけど、
同じような傷が31本もあったら話は別だ。
見られるのはかまわないけれど、多分、周りもいい気持ちはしないだろう。
そう思って私は常に長袖を着ている。
最初「日焼けが怖いから」という表向きの理由で長袖を誤魔化していたけど
いつの間にか日焼けが怖いから長袖を着ているのか、傷を隠したいから
長袖を着ているのかどちらなのか自分でも分からなくなった。

そうやって色々なことがぐちゃぐちゃしていたころ、私は会社の温泉旅行に行く羽目になった。
当然のことながら腕を晒すことになる。
腕にタオルをかけたり、必死に腕を胴体に引き寄せたりしてどうにか誤魔化した。
絶対に見られたくない。そう思っていた。

ところがこの頃、心境の変化が起きたらしい。
それに気付いたのはある災害が起きた時だった。
被災地にボランティアに行ったところ、その日の宿泊所に風呂がなかった。
だから銭湯に行くことになった。
その銭湯で湯船に浸かっている瞬間に、ごく自然に腕を晒して歩いている自分に気付いた。
服を脱ぐ時も無理に服を掛けて隠さなかった。
浴場で歩いているときもタオルで腕を隠さなかった。
自分は自分の傷を受容した瞬間だと、ふとそう思った。

私は相変わらず真夏の暑い中長袖を着ている。
でももし技術が発展して、「腕を真新しい綺麗な腕に交換できるよ」と
言われたとしても私は交換しないだろう。
出来ないのではなく、自分の意志でしないのだ。
私の腕は私の勲章でもあることに気付いた。
見せびらかさないけれど、それが私自身の象徴でもあるのだ。
posted by はぴたん at 11:41| Comment(0) | 物語(自作小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする