著者:大塚敦子
出版社:岩波ジュニア新書
島根県にある島根あさひ社会復帰促進センターという刑務所では
盲導犬の候補を育てる更生プログラムがあるということをご存じですか。
私は「<刑務所>で盲導犬を育てる」で初めて知りました。
そもそも盲導犬を刑務所で育てられるのかというのが最初の疑問なのですが、
盲導犬向きの資質を持った両親から生まれた子犬を、生後2か月から1歳に
なるまで「パピーウォーカー」と呼ばれるボランティア家庭に預けられて
から、本格的に盲導犬の訓練を受けます。
その「パピーウォーカー」の役割を刑務所内のプログラムの一環として行っているのだそうです。
2009年からプログラムが開始されて、2015年までに6頭の盲導犬が誕生
しています。
パピーウォーカーの役割として、子犬(パピー)を愛情いっぱいに育て上げることがあるのですが、それが結果的に受刑者の自己肯定感を育むこと
もあるとか。
これは6人1組で1頭のパピーの担当をすることで、誰かに頼られたり、
頼ったりする経験をたくさん経験し、自分自身に対する否定的な認知を
ポジティブな見方に変化させる一助になっているから(要約ですが)なんですね。
本書ではパピーウォーカープログラムの第一期の担当者へのインタビューやパピーの成長を元に、刑務所で盲導犬を育てることについて、その意義を
分かりやすく、かつ読みやすく書いています。
読みやすさは抜群です、というのもこれは岩波ジュニア新書といって
若い世代(恐らく中学、高校生くらい?)を対象にして書かれているからです。
ページ数的にも200ページ程度の新書なので、割とすぐに読み終わるタイプの本ではないかと思います。
この本を読んでいて新しく知った事柄として、刑務所でパピーボランティアが行われていることはもちろん、PFIという仕組みの刑務所が存在することがあります。
PFIというのは民間の資金やノウハウを活用して、施設の建設、維持管理、運営をなどを行う公共施設の経営方法の一つなのですが、
島根あさひ社会復帰促進センター「受刑者の給食、施設内の清掃、警備、受付など、おもに公権力性の弱い部分」を民間で行っています。
(公権力性の強い刑罰の執行は国の責任で行う)
もともとPFIという事業自体は上下水道のインフラなどで実施されている
ことは知っていたのですが、刑務所でも民営化が進んでいるということを
今回初めて知りました。
もうちょっと詳しく知りたいので、他の本も読んでみたいと思っています。
なんかまとまりのない文章になっちゃいましたが、盲導犬やボランティア
などに興味がある人にはお勧めの本です。