2016年08月28日

*読書日記『<刑務所>で盲導犬を育てる』大塚敦子

書籍名:<刑務所>で盲導犬を育てる
著者:大塚敦子
出版社:岩波ジュニア新書

島根県にある島根あさひ社会復帰促進センターという刑務所では
盲導犬の候補を育てる更生プログラムがあるということをご存じですか。
私は「<刑務所>で盲導犬を育てる」で初めて知りました。

そもそも盲導犬を刑務所で育てられるのかというのが最初の疑問なのですが、
盲導犬向きの資質を持った両親から生まれた子犬を、生後2か月から1歳に
なるまで「パピーウォーカー」と呼ばれるボランティア家庭に預けられて
から、本格的に盲導犬の訓練を受けます。
その「パピーウォーカー」の役割を刑務所内のプログラムの一環として行っているのだそうです。

2009年からプログラムが開始されて、2015年までに6頭の盲導犬が誕生
しています。

パピーウォーカーの役割として、子犬(パピー)を愛情いっぱいに育て上げることがあるのですが、それが結果的に受刑者の自己肯定感を育むこと
もあるとか。
これは6人1組で1頭のパピーの担当をすることで、誰かに頼られたり、
頼ったりする経験をたくさん経験し、自分自身に対する否定的な認知を
ポジティブな見方に変化させる一助になっているから(要約ですが)なんですね。

本書ではパピーウォーカープログラムの第一期の担当者へのインタビューやパピーの成長を元に、刑務所で盲導犬を育てることについて、その意義を
分かりやすく、かつ読みやすく書いています。
読みやすさは抜群です、というのもこれは岩波ジュニア新書といって
若い世代(恐らく中学、高校生くらい?)を対象にして書かれているからです。
ページ数的にも200ページ程度の新書なので、割とすぐに読み終わるタイプの本ではないかと思います。

この本を読んでいて新しく知った事柄として、刑務所でパピーボランティアが行われていることはもちろん、PFIという仕組みの刑務所が存在することがあります。
PFIというのは民間の資金やノウハウを活用して、施設の建設、維持管理、運営をなどを行う公共施設の経営方法の一つなのですが、
島根あさひ社会復帰促進センター「受刑者の給食、施設内の清掃、警備、受付など、おもに公権力性の弱い部分」を民間で行っています。
(公権力性の強い刑罰の執行は国の責任で行う)

もともとPFIという事業自体は上下水道のインフラなどで実施されている
ことは知っていたのですが、刑務所でも民営化が進んでいるということを
今回初めて知りました。
もうちょっと詳しく知りたいので、他の本も読んでみたいと思っています。

なんかまとまりのない文章になっちゃいましたが、盲導犬やボランティア
などに興味がある人にはお勧めの本です。
posted by はぴたん at 16:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月25日

めまい、その後

先日、めまいが酷くて医者に行ったという日記を書きました。
その続報です。

結論から言うと原因不明でした。
色々と問題がないわけではない(起こるべきめまいが起きない、器質的なもの等)のですが、
脳や首のMRIを撮ったり、首の血流量を計測したりたくさんの検査をした結果、直接的にめまいの原因だと
特定できるものが見つかりませんでした。

ただ、めまいの症状(目の前が暗くなる)的に言うと血流に何かあるんじゃないかというのが
耳鼻科の先生の見立てですが、なにぶん検査結果に出ないので医者としてもなんとも言えないそうです。
脳外科の先生曰く特に問題はなさそうとのこと。

投薬や食事、運動などで改善が見込めるわけではないので、めまいのきっかけになることを避けると
いうこと、念のため年末になったら、今回受けた一連の検査を再度してみるということ、
以上の二点を踏まえて経過観察というところで決着がつきました。

そんなこんなで、誰にというわけでもなく、めまいはありますが元気ですという報告でした。
posted by はぴたん at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月24日

8月24日は千年女優の日

今日はアニメーション監督の今敏監督の命日です。
追悼として千年女優を観ました。
何度見ても引き込まれる作品です。
好きすぎてDVD貸し出して布教したいくらい。
大好きです。

エンディングで今監督の名前を見たときに涙目になったのは秘密です。
多分来年も見ると思います。
posted by はぴたん at 23:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月21日

*読書日記『オバマ演説集』三浦俊章

書籍名:オバマ演説集
編訳:三浦俊章
出版社:岩波新書

先日のオバマ大統領の広島演説を全文読んだ後、偶然図書館にあったので
借りてみました。
「オバマ演説集」、出版年が2010年なので広島演説は掲載されてませんが、
有名なプラハ演説(核縮小の方針)やノーベル賞受賞演説、大統領就任
演説等が載っていて大変面白く読めました。
どの演説も興味深かったのですが、一番最初に引き込まれたのはまだ有名に
なる前の2004年の民主党全国大会演説「大いなる希望」というものです。

「私が言っているのは、真実から目をそらす楽観主義ではありません。
話題に取り上げさえしなければ失業問題は消えてしまう、とか、医療保険
の問題は無視すればおのずと解決されるというのは、ほとんど頑迷な無知
にすぎません。
私が言っているのは希望とはもっと実質的なものです。
焚き火を囲んで自由を求める抗議の歌をくちずさんだ奴隷たちが持っていた希望です。
はるか遠い国を目指して故国を出た移民たちが持っていた希望です。
メコン・デルタを勇敢にパトロールしていた若い海軍中尉が持っていた希望です。
逆境をものともしなかった製剤所の労働者の息子が持っていた希望です。
そしてこのアメリカにはきっと自分の場所があるはずだと信じていた、
変な名前のやせっぽちの少年が持っていた希望なのです。
大胆不敵なまでの大きな希望なのです。」

スピーチライターがうまいのか、翻訳がうまいのか、どちらとも素晴らしいのだと思うのですが、
動画を見ずに文章だけでも「これは名演説だ」と
感じました。
構造としては同じようなものを並べ立てて強調するというシンプルなもの
なんですが、畳みかけ方がうまいというのでしょうか、引き込まれます。

同じような調子のもので言うと、イスラムとの関係について語ったカイロ演説(2009年)の
非暴力についても力強さを感じました。
「それはごくシンプルな真実を語っています。暴力は袋小路なのです。
睡眠中の子供にロケット砲を打ち込んだり、バスに乗っている老婆を
爆弾で吹き飛ばしたりすることは、勇気の表れでも力の表れでもありません。
それは道義的な正当性の主張ではなく、道徳の放棄です。」
アフガンとかイラクにさんざん派兵しておいて何を言うかって感じですが。
その矛盾は同年のノーベル賞受賞演説で重苦しくのしかかっています。
必死に「正しい戦争」というものがあって、それをアメリカはやっている
のだというメッセージを婉曲に表現しています。

その点、広島演説は分かりやすい。
唯一、核兵器を使った国として、核兵器を運用している国として、科学の力をどう使うか。
核兵器の脅威を軽減することがアメリカの責任の取り方だというメッセージを受け取りました。
犯してしまった過ちは取り消せないけれど、責任を引き受けることができる、
そんな心情にうっかり気持ちを動かされました。

わかりやすさを求めちゃうあたり、現代にヒトラーみたいな人が出てきたらヤバいなと思うのですが、今のところオバマ大統領の演説は問題ない
ように感じます。

あと、オバマ大統領がやろうとしていることがあまりにも大きいことなので
「私が生きている間には達成できないかもしれません」というような
フレーズが広島演説にも他の演説にも頻出するのがちょっと面白いなと
思いました。謙虚だ。

オバマ大統領が大統領として最後にするであろう演説はぜひ読んでみたい、
見てみたいと思わせる一冊でした。
安部首相の演説とかもじっくり読めば面白いのかどうか、今度時間が
あったら読んでみたいと思います。
posted by はぴたん at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

*読書日記『もうひとつの手話 ろう者の豊かな世界』斉藤道雄

*読書日記
出版社:晶文社

先日ツイッターを見ていたら、こんなツイートを見かけました。

僕はこの宿題に大賛成。以下を埋めるのに、画一的になるわけがないじゃないか
・書籍の選択
・抜き出す箇所の選択
・きっかけ、読み始めの感想
・自分の体験
・書き出しの部分に戻って感想を付け足す
・自分がどう変わったか? https://t.co/lk1wLnZ2vU

@ockeghem

読書感想文の型、便利じゃんと思って実際に書いてみることにしました。

1.書籍の選択
いつも書いてる読書日記でも導入でよく「なぜこの本を手に取ったか」というのは説明していますね。
今回の「もうひとつの手話」を選んだのはツイッターか何かでお勧め
されていたからです。
何のツイートだったか記録しておけば良かったですね。
副題の「豊かな世界」というところも気になったポイントです。

2.抜き出す箇所の選択
読書感想文では冒頭で作品の引用をすることを勧めているらしいです。
そこで今回引用するのは以下の文章。
「徹夜で、夜も寝ないで考えて決めたんです。それは、聴者のために
一生懸命声を出したところでいったいなんになるんだと。自分は読み書き
もできるし、両親とも話はできる。
じゃあ、なんのために声出しているんだろうって考えたんです」(p.55)

引用したのはろう者の米内山さんの発言です。
米内山さんは手話も口話も出来た優等生だったそうなのですが、ある日
口話を辞めると決断したのでした。

つい最近までろう学校では手話を使わずに、口話法という唇の動きを
読み取る教育法を主流としてきました。
これは耳の聞こえない子供にも耳の聞こえる人(聴者)と同様に声に
出して「日本語」を発声させる教育方法です。
聞こえないのに、無理矢理口の中に先生の手を突っ込まれて発音を
教わるのだそうです。
苦しい教育方法です。

聞こえる先生方の主張はこうです。「子供たちを聞こえる世界になんとか
引き入れてやりたい」(p.53)

でもろう者の人たちは口話法よりずっと便利な言語を持っていました。
それが日本手話です。

米内山さんは学校に呼び出しを食らっても、日本手話を使い続けると
決めたのです。
この固い決意に私は本当に単純に凄いと思いました。
周りのみんなは英語を使っているのに、日本語だけを使い続けると
決めるようなものです。

3.きっかけ、読み始めの感想
読み始めた感想はそうですね、TBSのディレクターをしていた人が
書いただけあって読みやすいと感じました。
言葉遣いが優しく、つかみがうまいと感じました。

4.自分の体験
私自身は今まで手話に直接接する機会はなかったのですが、NHK
が放送している手話ニュースなんかは結構見ている方だと思います。
表情も言語の重要な要素なだけあって、見ていてとても面白い。
(のでお勧めです)

5.書き出しの部分に戻って感想を付け足す
さきほど「日本手話」と鍵括弧付きで書いたのには理由があります。
日本には手話と呼ばれる物が二種類あるからなんです。
一つはろう者の手話である「日本手話」。
もう一つが日本語の文法や単語を手の動きに対応させている「日本語対応手話」。
「日本手話」と「日本語対応手話」は全く異なる言語です。

日本で使われている手話なら日本語じゃないのと思われる方もいると
思いますが、日本手話と日本語は全く別の言語です。
英語と日本語と同じくらいに違う言語です。
もちろん日本語の影響は強く受けていますが、外来語たっぷりの日本語の
文章を見て「これは英語の文章だ」とは誰も言いませんよね。
例えば「グローバルな人的リソースをアサインしたプロジェクト」
みたいな文章です。

6.自分がどう変わったか
この日本手話は日本語と異なる言語体系だと知って、最初に気になったのは
NHKの手話ニュースや手話講座は一体日本語手話なのか日本語対応手話なのかという点。
気になったのでそれぞれのサイトを見てみたんですが、特に記載がないんですよね。
手話ニュースの方が表情が豊かなような気がするので、日本語手話でかなというレベル。
問い合わせれば分かるのかもしれません。

と、ここまで読書感想文の型に当てはめて文章を書いてみたんですが、
どうも普段私が書いているものとあまり変わり映えがしないと思うんですが
どうなんでしょうか。
私としては、読書日記書きたいけど、うまく感想がまとめられないって時に
使うと便利かなってくらいなんですが、最近本当に感想書きたいって時しか
ブログを更新していないので、なんかあんまり使わなくてもいいかなと
思いました。

ついでに宣伝。
NHKが日本語対応手話の単語をCGで説明している動画サイトがあるので、
以下にリンクしておきます。
何かあったときに便利かもしれないので、メモ程度に。
http://cgi2.nhk.or.jp/signlanguage/sp/index.cgi
posted by はぴたん at 15:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする