2017年08月05日

*読書日記『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美

なんか不思議な物語、と思いながらぐいぐい読み進めることができる短編集のような長編。
あら便利ーと思いながら、あらすじはアマゾンからコピペです。

『遠く遙かな未来、滅亡の危機に瀕した人類は、「母」のもと小さなグループに分かれて暮らしていた。異なるグループの人間が交雑したときに、、新しい遺伝子を持つ人間──いわば進化する可能性のある人間の誕生を願って。彼らは、進化を期待し、それによって種の存続を目指したのだった。
しかし、それは、本当に人類が選びとった世界だったのだろうか?
絶望的ながら、どこかなつかしく牧歌的な未来世界。かすかな光を希求する人間の行く末を暗示した川上弘美の「新しい神話」』

こう書くとSFかと思われるんですが、SFというよりファンタジーですかね。
例えば表題作「大きな鳥にさらわれないよう」は実は異能を持つ少女エマが町から出て行くことを
決心するまでの物語。

なんかねー、全体的に不思議な印象のまま話が進むのです。
大きな母システムとか、観察者たちとか。
進化を待ち望んでいる一方で異質な存在を許容できなかったり。
それが人類というものの本質なんじゃないかってくらいに描写されています。
私もそう思うのですが。

さて、そんなわけで読んでみてください。
最後まで読むとまた最初から読み返したくなる一冊です。
posted by はぴたん at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月21日

*読書日記『時間の止まった家: 「要介護」の現場から」関なおみ

明日は我が身と思わされる本です。
舞台は、保健所などから問題ありと要請が来るようなお家。
例えば猫屋敷とか。
関なおみさんはそういう関連の問題を引き受ける区の特別チームにいました。
この本では著者が実際に関わったケースを解説付きで紹介しています。
おそらく何かの雑誌の連載だったようですね。

印象に残ったのは最後の方の女性ホームレスの話。
最初は同じホームレス仲間の兄貴肌の男性と一緒に暮らそうという話になります。
ところが一緒に住んでみるとその男性金払いが悪いとか約束を守らないとかで彼女の方から
別れを切り出します。
最初読み始めた印象では大丈夫かなこの女性は、と思っていたのですが、きちんと
そういう面で対応できていく様子にエンパワメントの重要性を感じました。
posted by はぴたん at 05:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月19日

*読書日記『もうひとりののぼくも、ぼく』岡田淳

表紙に一人立つ少年に目がいきます。
ぼんやりとした表情をしているその少年が主人公かずと(一人)です。
タイトルに「もう一人(ひとり)〜」と主人公の名前一人(かずと)の仕掛けが憎いですね。

さて、内容ですが、ある日かずとはヤマモモのおばばという妖精(神さま?)に出会い
「せかせかのカズト」と「ぼんやりぐずぐずするかずと」の二人に分けられてしまいます。

これは生きていくのがつらい人や生き物たちが、そのつらさを一時的にヤマモモの木に
吸い取ってもらい、生きていくための魔法のようなものです。
かずとは特にこれといってつらい何かを抱えているわけではないのに、身を分けられて
しまいました。

せかせかのカズトは何をするにしてもせっかちで、常に焦燥感に追い立てられています。
一方でぼんやりのかずとは、ヤマモモのおばばの家でのんびりと過ごしています。
どちらのかずとも時折何か忘れ物をしたような感じに襲われますが、そのまま何日か
過ごします。

そしてある日おばばはかずとに言います。
「もしもヤマモモの木が、おまえのぼんやりぐずぐずをすいとってしまったら、
おまえは変わる。ちがう人間になってしまうんじゃ」と。
ヤマモモのおばばは急いでせかせかのカズトの元に向かいます。
ちょうどその時カズトは強い強い焦燥感に苛まれ身動きが取れなくなっていました。

ヤマモモのおばばはカズトを説得してヤマモモの木の下でカズトとかずとを元に戻します。
その瞬間二人がこの数日の間に経験した出来事や感情も共有され、つらい思いも
ヤマモモのおばばと過ごした楽しかった時間も一つの経験となっていきました

と、こんな話です。
せかせかのカズトのなんとも言えない焦燥感、苦しみは読んでるだけでつらくなりました。
今の私があのヤマモモの木の下に行ったら身分けしてもらえるんだろうか、そんな空想が
膨らみます。
posted by はぴたん at 20:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月20日

*読書日記『デスマーチはなぜなくならないのか IT化時代の社会問題として考える』宮地弘子

このところあまりにも読書日記を書いてないので自分の中のフォーマットを忘れてしまいました。
でも最近読んだので書くよ。

デスマーチ、この言葉を聞いたことがある人はいると思います。
簡単に言うとあるソフトウェアを作るのに3ヶ月かかるものを1ヶ月で
作ってください、しかも1人で。みたいな状況のことです。

本来の意味は「主として戦争捕虜に強いられる過酷な状況下での行進」(p.7)
を示しています。
この本はそのデスマーチがどのような環境下で発生したのかを当事者への
インタビューやエスノメソドロジーの手法で解き明かしたものです。
(エスノメソドロジーとは社会学の手法の一種)

この本によるとデスマーチとは一人一人が「その時最も適切だ」と
思われる行動をとった結果発生するものだとしています。
この場合の「適切」とは一般的な業界での適切とは異なることに注意が必要です。

例えば、ある製品Aを作る時に技術的な問題があって、3ヶ月という開発期間は
短いとされるものだとします。
通常それは「納期が短い」と営業なり技術なりが異議申し立てが行われるかも
しれません。
しかしIT業界では「できない」ということは「私は無能である」と宣言するような
行為だとみなされているというのです。
当然のことながら「私は無能である」と宣言することは苦しいことです。
つまり、異議申し立てが行われにくい。

こういったIT業界の「あるべき規範」が通常の規範(異議申し立てがある)と異なった結果
納期間際にもかかわらず、深刻なバグが発生する危機的状況でも「さらに1ヶ月の間、Aさんは、
時に朝までにもおよぶ連日連夜の残業や休日出勤を重ねることになり(中略)期限のちょうど
その日にCD-ROMの製造工程へと送られ」るようなことが起こるのです。

このようにその問題が起こる状況での「適切」「あるべき規範」に注目することで
この本ではデスマーチを分析しています。

デスマーチ、噂程度では聞いたことはありますが、ここまでインタビューでデスマーチ
に巻き込まれた(巻き起こした)人の話を読むことができるのはなかなかないです。
その上エスノメソドロジーの手法についても学べる貴重な1冊だと思います。
posted by はぴたん at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月14日

*読書日記『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』ジェーン・スー

タイトルからして面白いと思ったら本当に面白かったです。

いわゆるエッセイ集です。
「丁寧に暮らす」って難しいよねというところでクスクス笑ってしまいました。
自分の中の少女の部分は否定しないで認めるとか。

ピンク色と和解するとか、色々と私のツボを突いた話が多かったです。
粉チーズは脇役としてしか食べられないけど、大量に食べたいよねってくだりに
スガシカオと同じこと言うなーとつい記録を残してしまいました。

これだけの情報じゃよく分からないと思うのですが、女性も男性もタイトルに
興味があったら読んでみてください。
posted by はぴたん at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする