2016年11月13日

*読書日記『この世にたやすい仕事はない』津村記久子

正直に言います、この本は小説じゃなくてエッセイだと思って借りました。
図書館で予約してから半年くらい待ってやっと手にして、本を開いて初めて気付きました。
これ短編集だったのか。借りてよかった。

主人公は「私」、名前はほとんど出て来ないです。
一貫して私。
その私が色々と不思議な、ありそうでなさそうな仕事をしていく話です。
初っ端の仕事が、ある人物を隠しカメラで監視するというもの、違法じゃないのかそれ。
次がバスのアナウンスを作る仕事だけど、なにか不思議なリンクというか変なことが起こる。

というように、実際にあってもおかしくないんだけど、実際に起きたらおかしいよねという出来事が
比較的淡々と語られます。
全体的に背筋がヒヤリとする系のファンタジーなのかなと思います。

一番うわってなったのが、ポスターの張り替えをする仕事の中での話です。
主人公はあるデザイン事務所で働くのですが、そんな中で「さみしくない」をキーワードに活動している
他の団体と接触する場面。
さみしい人を探し当てては無料の交流会に誘い、見込みのありそうな人は有料の食事会に誘うというのが
その「さみしくない」団体の基本的な行動パターンです。

色々とあって主人公はその団体の交流会に参加することになるのですが、その時の雰囲気や描写が
この手の団体、ありそうだというという現実味が怖い。
そして不協和音が鳴り響くこの短編のラストが先の見えない不安を抱かせます。

一読しただけなのではっきりとは言えませんが、津村記久子の持つヒヤヒヤする不気味さを
うまく短編の散りばめたなという感じです。
主人公についての描写が、「ポトスライムの船」や「十二月の窓辺」より世渡り上手になったというか
色々な手際が良くなっている感じたので、その辺りは安心して読めました。
posted by はぴたん at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする